2009年10月24日土曜日

国債利払い費、税収の2割超す……これは日本の「階級固定化」につながる傾向である

また今日も憂鬱なニュース:
NIKKEI NET(日経ネット):国債利払い費、税収の2割超す 09年度見通し、政策財源に使えず:"2009年度の新規国債発行額が50兆円を超す見通しになるなか、国債の利払い費が膨らむ可能性が強まっている。国の税収に対する利払い費の比率は10年ぶりに20%を超え、政策に使える税収が一段と減る見通しだ。利払い費に償還分も合わせた国債費全体では20兆円を超え、社会保障費の25兆円に迫る。政府は利払い費の増加リスクを抱え、難しい財政運営のかじ取りを迫られる。"
「ナントカせねばならない」とはみなさんおっしゃるが、結局みんななにもする気はないので、この比率はどんどん高くなるだろう。前代未聞? そうでもない。過去にも同じような例がある。

つまり「何とかする」為にやることは次のことだが、まずできないのだ:
  1. 生きてる国民から税金を取る。つまり所得税、法人税、消費税などを増やす。でも生きてる人間は「票」をもっているので、これは出来ない。
  2. 死んだ人間から税金を取る。つまり相続税率を上げる。でも相続する人間は生きているので、これまた不可能。
  3. 歳出削減をする。でも国民のほとんどは税金のバラマキのおかげで食っているので(なんせ国民の54%は既得権階級らしい)これも難しい。今回補正をちょっといじっただけであの騒ぎだ。
  4. デフォルトかインフレで借金を踏み倒す。しかし「営々として築き上げた」内外価格差を考えれば物価は下がる方向にしか動かない。いくら国内付加価値部分だけの価格を上げようとしても物価全体がデフレであれば、経済は不況にこそなれインフレとはならない。踏み倒すのは難しい。デフォルトは面子があって出来ない。

結局、なにも出来ないので、国債の利払いはどんどん膨れ上がらざるを得ない。歳出の半分ぐらいになるまでには時間はそう掛からないだろう。本来ならキャピタルフライトが起きても不思議はないのだが、ニッポンの大金持ちは総じてローカルだから(そういう人にしかおカネが配分されない仕組みだから)幸か不幸かそういうことにもならない。公共事業をやる度におカネはイナカに回って、民間投資に回らず、郵貯や預金を経由して国債に戻る(こういうシステムを維持することこそ今度の亀井人事の狙い)。何とかなってしまうので、国債費だけはどんどん増えることになるのだ。

その結果、大惨事が避けられみんながハッピーみたいに見えるが、日本社会が払うコストは想像以上に大きい。経済が歪曲されるという以上に、社会階級の固定化というすぐれて社会的な問題が生じるからだ。

つまり資本主義というのは、勝ち負けのシステム。勝つときもあれば負けるときもある。商売で財産を築いても一度失敗すると無一文となる。30年以上続いているビジネスは珍しい。おカネを事業に投資しようと株を買っても一瞬にして吹っ飛んでしまうこともある。人に貸しても貸し倒れリスクがある。「奢れる平家も久しからず」という法則が維持されている「公平」なシステムなのである。しかし国債や、郵便貯金や保険で保障される預金(国債購入に使われる)は別だ。絶対安全な資産なのである。リスクを取らないお金持ちの資産は絶対に安全で利子分だけ確実に増えてゆく。元本保証されている上にレント(利息)の取り立ては税務署がやってくれるのでラクチン。こんないい投資はない。子孫にも確実に受け継がれる。「売り家と唐様で書く三代目」の悲劇は起こらないニッポンになるのである。

こういう話は前代未聞か? そうではない。明治時代の初期がそうだった。政府の予算の半分程度が固定経費である「金禄」の支払いのために使われたのである(金禄は国債の利子ではないが固定的で建設的でないという意味では同じようなものだ)。江戸時代に延々と続いた固定化された身分制度のおかげだ。年貢で集めた税金のほとんどは働かないサムライの生活費に回ったのである。これでは国が成り立たないとして立ち上がったのが大久保利通。金禄を公然とデフォルトさせた。ここ:

Letter from Yochomachi: 8/5 Today 「金禄公債証書発行条例」の公布(1876)……平成の日本も見習え!


大久保利通みたいな人が現れないと、ニッポンは国債利子でぬくぬくと食っている金持ちの支配階級と汗して働き税金を払う被支配階級とに二分化され、政府(公務員)は、江戸時代の幕府のように、支配階級の代理人として国民から税金を取って支配階級に分配(金利支払い)するだけの機関と化するであろう。由々しきことである。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

>大久保利通みたいな人が現れないと、

私は散人さんを推します。

野猫 さんのコメント...

わかりやすくていい記事ですね。私の脳が変わったから、そう感じたのかな。笑

次に起こることは、金利を支払うための構造的隠蔽された多重債務でしょうね。で、猛烈に金利が膨らんで、アウトです。ここまできて、日本はリセットできるのでしょう。

昔は、戦争という手もあったけど、現代は、金利によって自己崩壊するのです。

ま、アメリカなんかは、オバマ大統領が、「みんなで助け合おう、夢がかなう!」という就任演説したわけですけど、実際は、大金持ちは姿を隠して知らぬふり、有名金持ちはしぶしぶ協力するようには見せかけてはいるようですけど、で、大金持ちを儲けさせていた金融屋には、悪徳に染まっていた人までいて、つまり、アメリカ国民は、口だけで、まるで助けあっていないわけです。

私としては、アメリカが日本より先にぶっつぶれてくれれば、これは幸運で、日本人も目をさますでしょうね。地方に利益が回るようにしたのは、アメリカだし。とにかく、本当に頭の良い人は、アメリカのことなんか信じません。でもま、好きですけどね。好きと信じるでは違います! 

もともと、アメリカは、移民ばかりで貧乏人だったのに、今じゃ、大貴族制になって、往年のヨーロッパ貴族より大金持ちだと思いますよ。グローバルとか綺麗ごとをいっているけど、全世界を自由植民地にしているようなもんですし。やっていることは、ハワイでやった手口を世界に広めただけ。